負けたアメリカ

ブッシュが任期切れを前に、イラクからの撤兵を言い出した。

イラクでは昨日シーア派の強硬グループ、サドル師派がシーア派最大会派から脱退。すでに多くの閣僚も辞任していることなど、イラクもアフガン同様に混迷の度合いを深めている。
先日の新聞では、米軍の統合参謀本部議長が、イラクへの侵攻について「イラクの人々から歓迎されるだろうと考えていた」と述べてたが、そのコメントには大国の驕慢をみる思いがした。

アメリカはイラク駐留米軍削減を言い出して、現在の17万人規模から2年かけて10万人規模まで減らす予定らしい。最終的にはイラクの治安状況を見ながらの撤兵となるだろうが、今の状態での撤兵=勝ったとは言えない。すなわち、アメリカはイラクに負けたのだと思う。
ただし、一度握った権益(駐留地は自国と同じという観念)では簡単にイラク派兵で手に入れた駐留地を手放すわけもなく、ズルズル延々とイラクにい続けることは間違いない。
同様に思えば、アフガンからのアメリカの完全撤兵もあり得ないのだろう。

この4年半イラク戦争以来、40ヶ国以上がイラクの復興支援などの名目で軍部隊を派遣。その後、イラク治安の悪化や各国内世論の反発などから、すでに15ヶ国の部隊が引き揚げていると言われている。
日本の陸自も昨夏には撤兵、あの50℃にもなる過酷な自然環境下で、自衛隊員たちにはご苦労様なことだったが、莫大な金額には見合わない内容の支援だったと思う。
今は空自が多国籍軍の物資輸送活動に従事しているが、民間機が物資を積んでイラクへ普通に乗り入れられるようになった現在、空自でなければ出来ない輸送とは何か? 
とどのつまりはアメリカの「イラク戦争」への純然たる後方支援にしかならない。そして後方支援活動をしていることで、日本(私たち)はあきらかに戦争に参加しているのだ。
後方支援活動、そこには単に米国との強固な同盟関係を世界に誇示したいがための思惑しか浮かばない…

先月のワシントンポストだったかな?の報道では、米陸軍の新兵募集に応じた若者の大半が2万ドル(約240万円)の「臨時ボーナス」を受け取ったと伝えていた。臨時ボーナスを出さなければイラクやアフガン戦争で、新兵の集まりが悪いことの表れだろう。
今月末には年間8万人の募集目標を達成する必要があるらしいが、イラク戦争に対する世論の批判に加え、両親や教師らが若者に入隊を勧めなくなっているという。 
それはそうだろう、イラクでの犠牲者がすでに4000人近く、現役軍人らの自殺件数が26年ぶりの高率と聞けば、イラクやアフガンでの緊張した任務を想いおこし、入隊を躊躇して当然ではないのか。
240万円の臨時ボーナスにつられて新兵に応募、イラクやアフガンへ派遣され、そこにアメリカが駐留することの「疑問」や、矛盾だらけのアメリカ的民主主義を万が一にも感じてしまえば、心ある人なら悩むだろうし、ストレスから心身症になっても不思議ではない。

パキスタンの隣国アフガンからのアメリカ撤兵は何時になるのだろうか…
第二次世界大戦後のアメリカ外交は、国益優先のみで常に親米政権を作り上げること、あるいは後押し、維持するためのスーパー国益主義をとり続けている。それもアメリカに都合が良ければ「核開発も認める」というダブルスタンダードの政策で。
そんな2枚舌、3枚舌のアメリカに、多くのイスラーム諸国が反発を持ったとしても当然だわ。