誘拐・拉致は背中合わせ

イスラーム国で拉致されている日本人2人に、殺害予告が出たと……  欧米日とは信じるところの正義や基準が対立している武装勢力との間で、これまでこうした事件の起こらなかった方が不思議なくらいの世界情勢ではあるまいか。

そもそも…と言うべきか……イスラーム国は、イラクやシリアに攻勢をかけていたアメリカが育てたとも言える。アフガンとパキスタン武装勢力も1980年代~1990年代にかけて、アメリカが莫大な資金と支援をして育てた。アフガンの山道で武器弾薬を運ぶため、世界の駄馬相場が替わったと言うくらい駄馬を輸入までした。アメリカは常に自分たちに都合の良い勢力と結びつき、自分たちの言うことを聞かず、不都合になったら「切り捨て」て来た。
アメリカによる「テロは許さない」とする、イラクやシリアに対する爆撃の範囲は次第に拡大し、「イスラーム国」の拠点を空爆、昨秋9月にはフランスも空爆に参加し、軍事行動やその支援に参加する国も増加した結果、イスラーム国が硬化して行ったようにも想える。

かって湾岸戦争の時、日本政府が多国籍軍の一員として支援金を出した。2回目は自衛隊の派遣をした。自衛隊の任務は後方支援だったと言うが、それでも一部のイスラーム教徒たちからは、日本には失望したと言われた記憶がある。日本政府が支援する2億ドルは、人道支援に使われると言うが、今はどんな理由を述べてもイスラーム国の人間には通じまい。いま彼らは自分たちの信ずるところによって行動しているだけだろう。

ジャーナリストの後藤さんは「ガイドに騙された」と言っていると、ネットのニュースで見た。オバハンたちは同時多発テロの後から数年にわたり約600日をアフガンで過ごした。 アフガンも安全とは言い難かった…… 息子のように何年間も可愛がっていた現地の者でさえも、首都から遠出の度に、「もしかしたら?拉致されるかも」と常に疑念を抱えていた。いま現在、誘拐も拉致もされずにパキスタンで好き勝手をほざいておられるのは、ある意味、運が良かっただけだと知っている。
危険地帯とは、そうした「誘拐・拉致」とは常に背中合わせにあり、事故は起こりうるからだ。

フランスの風刺紙では、長年、預言者ムハンマッドを笑いものにして来たが、かのローマ法王も、「他者の信仰を もてあそんではならない」と述べ、表現の自由にも一定の限度があるとの考えを示している。自分に人間としての尊厳があるならば、他人の尊厳もしかりであろう。 ...
世界人口71億人のうちイスラーム教徒は16億人、22%も占めている。産児制限率が低いイスラーム教徒の人口の伸びには、今後、著しいものがあるだろう。15年後にはイスラーム教徒の人口比率は26%を超えるいう推計がある。自分たちと価値も基準も、正義も違う人間が隣人になる時代なのだ。