生活苦と中国による債務の罠

昨今のパキスタンインフレ率は10%近い。ルピーの価値もこの半年で30%は落ちている。
昨年、首相に就任した「正義党」のカーン首相はオバハンから見れば不運の人に見える。
10年前に暗殺されたブット首相、その夫の「ミスター20%」と呼ばれた賄賂王のザルダリ大統領、シャリフ首相一族と歴代のトップは汚職をやりたくって私腹を肥やして来た。 そのツケは当然、国民にしわ寄せする。
そんなパキスタン首脳たちに業を煮やして「正義党」を立ち上げたカーン首相だが、経済悪化が著しい時に首相になったのは不運としか言えない。

パキスタン債務の最大の原因は「一帯一路プロジェクト」によるものが大きいと言う。中国は交渉相手を籠絡させるために「ハニー・トラップ」「債務のトラップ」「賄賂のトラップ」を駆使すると言われている。
採算が望めないような大工事を強引に行なわせるには、相手に多額の賄賂を贈り身動きできぬようにする「賄賂のトラップ」が最も有効だと。 国への負担、債務は大でも個人の懐は半端なく潤うから貰ったもん勝ちであろう。
中国国営企業が資金を融通し、建設も手掛ける様々な大型インフラ計画は、中国からのローンや輸入を急増させ、パキスタンの債務を大きく膨らませた。資金も工事も全て中国が引き受けるとは言うが、融資の金利が「年利6%以上」であるというからに、債務は雪ダルマ式に膨らむ。ちなみに日本が途上国で支援をする場合の金利は0.1~0.2%程度とか聞く。
カーン首相は一帯一路プロジェクトには反対であり、パキスタンの外貨準備は輸出2カ月分程度になってしまった昨年末、ついにIMFの支援を仰いだ。それが2週間ほど前に決まり、3年間で60億ドル程度の財政支援を受けられると。だとしても……パキスタンの国民が強いられる暮らしは厳しい。
国にはドル準備高が2ヶ月分程度しかないため、今年に入って輸入税は跳ね上がった。当然、燃料を基本とする公共料金も跳ね上がる。
今までは多めに持ち込めた個人使用分の食料品にも空港で関税、バザールからは輸入品が無くなると言われている。 オバハンのようにパキスタンナショナリストとも言うべき昔人間は、輸入品とは無縁な野外バザールで買い物をし、車に乗るのも月に2時間程度ではあるが、パキスタンの物価は日本人が想像している以上に高く、途上国とは思えない高さで年々、暮らしにくくなっている。