千載一遇のチャンス

自衛隊機は先月の23日に入間基地を出発し、きょう帰着したという。当初の発表では日本人1名、アフガン人15名をパキスタンに輸送したと伝えられていたが、そのうちのアフガン人5名にはパキスタンのビザがなかったために、再びアフガンへ送り返したというではないの。
片や、「千年間の長い間で、たった1回会えるような好機、絶好のチャンス」をモノにしたアフガン人が現実にいたと(知り合いの高官から)聞かされた。米軍の輸送機に約600人の避難民が詰め込まれ、空港から飛び立つ写真や、市民が空港に押し寄せ飛行機によじ登ろうとするなど大混乱の写真、離陸する機体に掴まり振り落とされた衝撃的な写真は生々しかった。だが、中には「外国行きの飛行機に乗り込めば、アフガンから脱出できる」という噂だけで空港へトラックで突っ走り、自分が乗っていたトラックを市内で乗り捨て、飛行機に攀じ登ってそのままアメリカ(テキサス)まで運ばれたアフガン人もいたと。トラック運転手の家族は何処かで死んだと想っていたらしいが、1週間ぶりに「ワシはこのままアメリカで働くから、トラックを取りに行ってくれ」とアメリカから連絡があったとか。信じ難い、実に漫画のような話だ。
アフガン人の殆どが自国に希望を持っていない。タリバンに迫害されなくとも、海外に行けさえすれば・・と、夢のようなことを何時も何時も考えている。実際、一般アフガン人の暮らしは過酷だ。滞在していた6年余り、地方へ行けば太った人などは見かけないし、小太りの人も僅少だ。客人歓待の「掟」に従い自分たちは食べなくとも精一杯のご馳走をしてくれるが、田舎へ行けばナーン(小麦の粗引き粉で作ったパン)と数人に生のタマネギが半分ということも珍しくはない。そんな暮らしの中で、海外へ行った人の話を聞けば「大金を稼ぐことも可能だ!」との夢を見ることになる。
自衛隊機に乗り込んだアフガン人も、このまま日本へ行ける・・との夢を持ったことだろう。なのに・・四角四面にアフガンへ送り返すなんてね。自衛隊機に乗り込んで頂く前の気ぜわしさの中、書類の確認などをする余裕がなかったにせよ・・パキスタンでビザを取るためのサポートもしてやれなかったのかね。夢やぶれた人たちの気持ちを想うと気の毒でならない。