コックへの志願者

後期高齢者であるオバハンの体調を案じ、息子は新しいコックを捜している模様。キッチンに立っているのは趣味だ、それが1日に8時間であろうとも苦痛ではないが、苦痛は毎昼・毎夕のメニューだ。14歳と12歳は好みが真逆、その上、子供にありがちな野菜苦手。卵、マヨネーズ味は嫌いなどと言われるとメニューの範囲は狭まる。子供たち、息子夫婦、後期高齢者用と最低でも4-5種類のメニューを毎食ごとに(ボケ防止と思い極めて)考える。オバハンが死んだ後は諦めてコックを雇い、コックに文句を言いつつ日々を過ごせば良い、オバハンの有難味も解ろうというものだ!
昨日やって来たコック志願者は、カラコルムハイウエーの入り口にあたる村の出身だ。大学を出たが仕事はなくコックの見習いでも良いという。オバハンとしては「キッチンで洗い物さえしてくれれば良い」程度にしか考えていないが、出身地を聞いて面接にも至らなかった。カラコルムハイウエーの起点となるその地域一帯は、切り立った山に囲まれ農地はほぼゼロ。何をして生活をしていたかと言えば・・大昔から旅人を襲い金品を奪って生計を立てていた。今、現在も暗くなれば一本道で逃げ場もないその一帯は、長大なコンボイを組み、警察車両に護られて走る。
当地の人々は地域ごとに特徴が比較的ハッキリし、それが大概当てはまる。チベットに近い山岳地帯スカルドゥ地方の出身者は「真面目で泥棒はしない」 カシミールの出身者は「小知恵はまわる、だが1家に3人以上雇えば談合し危険な存在となる」 ギルギット出身者は「戦闘的、支配民族だったプライドだけが残り肉体労働を厭う」 パシュトーンは「よく働く人もいるが、男としてのプライドが高く戦闘的であり、盗みも多い」 パンジャーブ人は「明るい性格で小知恵がまわるが盗みを常習的にする」など等。どこの出身者であろうとも個々人は異なり真面目な人もあるが、40年余り見て来たオバハンの経験と、パキスタン世間の評判は大体一致するから恐ろしい。