勝手つんぼ②

立派な「勝手つんぼ」にオバハンがなれたのには、れっきとした来歴がある。オバハンがパキスタンへ来て間もなくの頃、役所を退職し事務所へ来て頂いていた40がらみのスタッフに、簡単な事務を言いつけても殆ど仕事をしない。その理由が「マダムの言うことが解らない」というものであった。言って解らないのならばと、紙に書いて2度3度と説明をしても仕事は進まない。仕事をする気はなく終日おしゃべりをしてお茶を飲んでいる。仕事などしてもしなくても、役所勤めと同じように給料は貰えると考えているらしい。確かに40年たった今も英語は得意ではない、自分の勉強嫌いを反省もしている。    
だが、その時に考えた。なるほど・・解らないという「便利な使い方」を、今後は自分もしてみようと。以来40年、不都合なことは未だにすべて言葉が解らない。出来ない。申し訳ないわね??でしのいでいる。その上、自分の言いたいことは徹底して繰り返してしつこく言うが、相手の言うことには耳を貸さないという、素晴らしい体質にも変わった。(ただし日本では、この便利な使い方を行使しないが)   
昨日、読んでいた本(浅田次郎の中原の虹、10回目くらいの読み直し中)の一節に素晴らしいことが書いてあった。「耄碌せずに長生きをし、しかも適当に耄碌を装えば現世の極楽を体験できるという人生の極意」と。

昨朝は110日ぶりに外へ出た。マルガラ丘陵の中腹にある政府の小さな小さなゲストハウスで、持ち込みの朝食。コロナが怖いのでと他人をシャットアウト、借り切り。雨上がりに手入れの行き届いた広々とした庭が鮮やかであり、借景の丘陵では緑が艶やかに匂い立つ。その庭の一隅で本を開く・・コロナを忘れて贅沢過ぎる一時。