大きなスイカ

商店街での買い物は嫌いだが、野外大バザールでの買い物は好きだ。商店街のように気取っていなくて、生鮮野菜が一般市価の半分以下なのも嬉しいが、庶民生活に必要なものしか売っていないのがお気に入りの理由だ。外国人相手の高級な八百屋から見れば3~4分の1で買い物が出来る。

数ヶ月前に比べて治安は良い、だが用心をして早朝の涼しい間に出かけた。いいなぁ~雨上がりの高い空、埃も洗い流されスッキリ爽やか。ここ2年ばかりは5月も半ばを過ぎたというのに、まだシーツを被って寝られる。数年前までの4月の10日といえば蚊に悩まされるし、暑くて唸ったものだ。それが何日間か暑い日があっても直ぐに(イスラマバードにしては)暮らしやすい日に戻るのだ。アッラー(神)に感謝することしきり。

本日は市場の値上がり具合を偵察。確かに主食は高くなっている。それも20kg、40kgの大袋売りはなく、10kg袋しか置いていない。ふ~~む…2~4割は高い。砕米ですら4ヶ月前には1kgが23Rsだったのに値切って40Rsだ。他の店では同品質の物が45~50Rsだものな…。生鮮野菜は暑さが厳しくないこともあってか、この時期にしては豊富だったから安かった。

本日のきわめ付きは大きなスイカ1個。
ここのところ、オバハンが号令をかけなくとも従業員たちは良く働く。先月末に(ついに我慢の緒が切れて)怠け者の従業員3人を解雇したせいかもしれない。昨今の不景気、国内には失業者が続出。再就職口などがなかなか見つからない今日この頃、彼ら自身にも危機感があるのかも?掃除担当の者だけではなく事務職以外はほぼ全員が箒を持つので、家も事務所も庭もピカピカで嬉しい。埃ひとつない。あまりに良く動くので、本日はご褒美に大きなスイカを1個買ってあげた。

「あま~い大きなスイカね」「ハイヨ、これでどうだい?」 山と積まれたスイカをオバハンはぽんぽん叩いて歩く。
「ダメダメ、こっちのスイカ」「マダ~ム、俺が選ぶんだ、責任は持つよ」「じゃぁ切ってみな。中が真っ赤でなかったら買わないからね!」
買い物に連れて行った従業員2名とオバハンが固唾を呑んで見守る中… スイカに大きな刃がザックリと入る。
「ギャ~オォ~~ ビャ~オ!」 訳の分からない奇声をあげる兄ちゃんに、何事かと周囲の注目が集まる。
「見て見て、お集まりの皆さん、買い物中のみなさん、見て見て、真っ赤なスイカ~、真っ赤なスイカ~~~。」
腕を真っ直ぐ上へと伸ばし、スイカの切り口を得意満面で集まった人に見せる兄ちゃん。
「一級品、一級品のスイカだよ~~~~~」スイカは確かに真っ赤でよく熟れ、その場で味見をしても旨かったが…久々に恥ずかしかったな…。しかし、人間の声とは思えん、あんな奇声がどうしたら出るのか…