予防接種済の証明書

チフス罹患者で大騒ぎをしているのは、命根性が汚くてビビリのオバハン一人だけらしい。消毒し忘れがないかと、オバハンは今朝も早くから騒いでいるのだが、スタッフたちは「言われたからヤルが・・」というタラタラした雰囲気。たかがチフス、何を騒いでいるのかと冷めた目で見られてチトめげた。  
法定伝染病の天然痘はWHOの発表によると、地球上から絶滅したらしいが、指定伝染病のポリオはパキスタンやアフガン、そしてアフリカのどこだったか1ヵ国でまだ発生し続けている。全世界のポリオ発症例の80%くらいがパキスタンだと言うが、アフガンでは正式なデータがないだけだろうとオバハンは勘ぐっている。ポリオ予防接種(ワクチン投与)の必要性を認めない部族指導者や、宗教指導者が居るらしく、パキスタンとアフガンの国境沿いにはポリオ発病者が多い。そしてポリオ予防の活動に従事する人たちを狙った襲撃事件は一時、多発していたが、この頃では耳にすることが減った。  
数年前だったか、パキスタン在住者が海外へ行くときには、ポリオの「予防接種済」という証明書が義務付けられた。パキスタン出入国ゲートでは念入りにチェックされた、その証明書。オバハンのパスポートには今も、それが挟み込まれている。
オバハンは予防接種を受けずに「証明書」だけを購入した。お金さえ出せば、どんな証明書でも購入出来ると聞く。パキスタンは実に頼もしい国なのだ。