国家反逆罪

ムシャラフ大統領による「重要な放送が本日ある」と、新聞では報道されている。
今のパキスタンにとっての「重要」とあらば、ムシャラフが軍服を脱ぐ日、総選挙の日、非常事態宣言の解除日などが想像される。だが非常事態宣言の11月3日もそうだったが、具体的な放送時間が新聞には明示されていない。国民は丸1日、「重要放送」を今か、今かと待ち続けた結果、ムシャラフ大統領による内容皆無の演説に出会った…
(午後3時からの記者会見が重要放送を兼ねていた。きょうのスピーチ20分間は大統領らしかったが、記者からの質問の答えには矛盾が多かった。本人は気がついていないのだろうか? とりあえず15日に解散、来年1月9日までに総選挙の予定。予定は未定ということだナ… もしかしたら非常事態が解除されないまま、選挙という茶番もあり得そう。

さて、これまでは現政権に対する抗議運動の先頭は法曹関係者だったが、非常事態宣言で戒厳令状態となって以来、法曹関係者の行動は目立たなくなった。公の場所で政府を批判すれば、扇動罪をも適用するという。扇動罪および国家反逆罪の最高刑は死刑となっているから、もう簡単には動けない。

法曹関係者たちは目立たなくなった。しかしジャーナリストたちは各地で報道の自由を求めて抗議行動を起こしている。鍵を結びつけた黒い布で口元を巻いたジャーナリストたち、「パキスタンは言論凍結時代」に入っていると抗議しているのだろう。

昨日、政府は現政権に対する「下品かつ侮辱的」な記事を書いたとして、英ジャーナリスト3人に国外退去命令を出したと。どこまでが下品で侮辱的なのかは、判断の分かれるところかもしれない。
日本の報道は常に客観的。個人的感情を交えないからセーフというところか?  いや、日本語で報道されているから、情報機関としても読みこなし得ないのかも。4文字熟語やたいそう難しい漢字の羅列で文章を整えるべきかも… 
非常事態宣言下のパキスタンでは、現政権批判の報道は禁止。違反者には1000万ルピー(約2000万円)の罰金、あるいは最大で禁固3年という。

日本からのパキスタン人の電話には危機意識がなく、平気でムシャラフ批判を続ける。危なくてしょうがない、無神経だと息子は怒る。 電話には雑音が多くなり、どこで盗聴されているかも分からないから、「ムシャラフ大統領は稀にみる指導力のある、立派な大統領と褒め上げ」電話を切ったと。
電話でも政府批判が出来ない空気が漂い、わが家も政府批判には苦笑いが伴うようになった…。