洪水被害は拡大

洪水は低地の川沿いを流れ下って全国に広がり、パキスタン建国以来の大被害になり、さらに被害は増えて行きそうだ。  先月末、北部パキスタンでの豪雨は現在、パキスタン国土の北3分の2を縦断通過し終わり、アラビア海に向け緩々と下って家や畑を2~3日間、飲み込み込んで去って行く。現在、すでに洪水による被害家屋は大地震を上回る70万軒にもなったと。 地震の犠牲者は8万人、それから比べると洪水による犠牲者は2000人だが、被災者は全国民の15%以上2000万人にも上りそうだ。
地震で何もかも無くした被災者もそうだったが… 洪水でも被害が大きいのは、常に貧しい人たちだ。地盤をしっかり整えた揺るぎのない家を持てる富裕層には、貧しい人たちに比べると被害は常に少ない。地代の安い劣悪な場所に泥を積み重ねただけの家しか持てない人々は、災害の度に常に全てを無くすリスクと背中合わせだ…

国連は昨日、洪水支援として国際社会に対し、400億円の緊急資金拠出を要請したと。すでに英米などからは支援金が送られているようだが、洪水の範囲が広すぎて支援は中々進んでいない。ようやくテント村の設置と食料配布が始まっただけだ。食料配布とテント村の運営には莫大な支援金が必要で、NWAのような超弱小NGOでは、何かを手伝いたいと思っても対応が出来ない…

5年前の大地震の被害は目を覆うばかりだった。被災地では死臭が物凄く死者累々、負傷していない人はなく、それだけに「一刻も早く何とかしなくっちゃ!」という、切羽つまった思いが現場を見たオバハンたちにはあった。 しかし、この洪水は範囲が広すぎて多くの支援団体も手を拱いているようだ。第一に治安が悪くて、気軽に何処へでも出かけられない。

また、山岳道路のカラコルムハイウエーは先月末より寸断のままで、生命線を断たれた北方地域では、食料不足で飢え始めたところも早や出て来た(ギルギットから北西、プニアール村など)  もちろん他にも幾つもの村が同じような状況だろうと思う。ギルギット方面であれば大昔からの支援地域でもあるし、事情も解っているから支援をとも思うが、いかんせん出向けない。限られた軍用機やヘリコプターは広大な被災地の上を飛び回って懸命の努力中だが、「焼け石に水」状態に等しい。
おまけに、この先まだまだ雨に見舞われるので、道路が開通するまでに1ヶ月はかかるとまで言われ始めた。こういう時こそ、輸送に大型ヘリが活躍してくれると良いが、なかなか事情が許さないのであろう。

当然のことながら燃料のガソリン類も北方地域へは届かず、センターの送迎車は使えなくなった。この分では、しばらく母子センターも閉鎖の方向だ。長雨でトウモロコシの収穫も見込めない北方地域(南部では綿花や野菜に大被害)、普段と変わりなく冬を乗り切れるのは何%の人々なのか…

先般から多くの方々より、NWAは洪水支援はしないのか? 義捐金を集めるよう呼びかけるが…などのメールが届き始めた。が、身動きが取れない中で実際問題として、何が支援出来るのか?? 他人サマからのお金を預かった限りは責任が生じるので、迂闊に踏み出せないまま、いまだに悩んでいる。決断力の速さだけが取り得のオバハンが、こんなに逡巡するのは珍しい…