上部フンザに出現の湖②

上部フンザに出現した湖については日本の新聞でも報道されたという。が、「土砂崩れ」という表現、報道だったので日本人の想像範疇では理解が出来ないらしく、たかが土砂崩れでどうして?と言う感じの質問が多い。
パキスタン北部には8000~7000mの高峰が並び立つ。とうぜん上部フンザを取り巻く急峻な山々には万年雪というか、万年氷河を抱いているものが多い。 もしかしたら温暖化の影響もあるのかもしれないが、氷河の重みや融水で地盤が弛んだのであろう、大きな地滑りを起こし落下したのが1月だった。最渇水期の2,3月までに政府は早く手を打てなかったものかと、今回の自然崩壊を前に想うことしきりだが、100年ごとの湖出現(いろいろな場所で)という、大自然の前には人間の力などは及ばないのかもしれない。

氷河の融ける時期に来て、標高差1000~2000mをも絶え間なく落ち続ける融水を含んだ泥濘は重く、踝までの僅か5cmの深さであっても足を取られてしまえば前進も後戻りも出来ない魔物のような存在だ。大昔、カラコルムハイウエー上で、この氷河から流れ落ちる泥濘に足を取られ倒れ流される人たちを見た。別の人は泥濘に靴をもぎ取られていた… 僅か5cmの深さが命取りにもなる。

湖の決壊を近くにして、パキスタン政府与野党の指導者たちはギルギットやフンザへ避難民たちの見舞いや激励に訪れているのを新聞やTVで見て… なんだか他人の不幸につけ入り、勧誘をする宗教団体に思いを重ねてしまうのはうがち過ぎか?  もっとも幸か不幸か、上部フンザは個人的にも世界一とも言われる金持ちの宗教指導者アガカーンを信奉するイスマイリ派の信者が多く住む地域だし、そのサポートも物凄いというから弱小NGOのオバハンたちが何かをする必要性は、今のところなさそうだ。
政府もカラッポの国庫から莫大な支援金を出すと言い、野党党首も被災家族に50万ルピーを出すと言う。5年前の大地震では被災者への支援金は10万ルピーだったかな。それから思えば破格の支援金だが、いま北方地域ではその支援金を巡っての分捕合戦で凄いと聞く。

湖が決壊すれば泥造りの家が多いこと故に、インダス河沿い川面に近いところは相当の被害になりそうだ。母子センターには被害が及びそうにないが、ギルギット川沿いのホテルなどでは避難を始めた。カラコルムハイウエーも川面に近い場所では寸断されることだろう。