ネット環境

北方地域はパキスタンによって実効支配はされているが、(正式な意味での)パキスタンではないと、多くのパキスタン人たちにも思われているようだ。イスラマからかかって来る電話が、「何時、パキスタンへ帰って来るの?」と表現されること。北方地域の人たち自身にも、自分たちがパキスタン人であるという認識が極薄いことからも知れる。北西辺境州同様に、彼らの中には部族意識しかないようだ。

帰属が確定せず宙ぶらりんの状態、本土から離れている地域と言う意味では、(良くは知らないが)返還前の沖縄のようか? ただし、フライトさえあれば新聞は本土から毎日のように届くし、最近、爆発的に増えつつあるネット使用でニュースも読める。ネットのお陰で一部の住民は世界のことをとてもよく知っている。

先夜はギルギット最大の女子神学校を訪れた。寄宿舎には250人、通いが200人という規模だ。最初に女性徒たち全員からシッカリした挨拶を受けた。その後、6~18歳くらいの少女たち60人は誰一人としてオバハンを盗み見もしなかったし、わき目もふらなかった。

女性導師(30代後半)が導師台に立つ。深く重々しいけれども良く響く声でコーランの一節を読み上げると、声は高い天井にこだまし、重厚さをさらに増す。少女たちも導師に続いて唱和する。続いて女性導師は読み上げた一節の解説をする。「神はーーーーーーーーーー」。何を言っているのかオバハンには、まったく分からんかったが、解説と質問に女性徒たちは声を揃え、返事をしていた…。
同時に少女たちはアラビア語で書かれたコーランの一節の下に、小さなウルドゥ語文字で解説を書き込んで行く。真剣な少女たちの眼差しは、部外者の侵入にも揺れない。日本では絶対に見られない「教育現場」だと思う。心底、恐れ入った…。同時にタリバーンは日々、こうして作り上げられていくとも。

女性導師の家にもパソコンはあって、彼女は911同時多発テロのことを、驚くほど(世界中の風聞となっている憶測までを含め)とてもよく知っていた。辺境の地でも、その気になれば色々な情報に触れられることは認識していたが、女性導師、その家族、一族への情報伝播力には改めて驚いた…。

ネットの使用料金はパキスタン本土よりも安い。印パ係争の地に対する細々としたパキスタン政府の気遣いの一環だろう。私学の小学校では1年生からコンピューターの授業があるという。ネット使用料が安ければ、爆発的にネット使用も増えることだろう。母子センターでもコンピューターを学びたい女性が順番待ちだもの…

それらはさておき、アフガンと余り変わらない辺境の地で、アメリカへの批判は、これでもかというほど聞かされた。