テロと核

パキスタンでは24時間が自分の時間。当地を留守にしていた2か月分の週刊誌をパラパラと斜め読みし、数日分の新聞見出しだけを眺めるのに5日も費やした(その間、真面目な本も1冊読んだが)…。日本の病院では眼底にピンホールがあると言われ、レザー光線で焼き付けて来た眼だから、少しは労わってやらないといけないような気はするが、ついつい読んでしまうのヨね…。
当地の新聞報道は2ヶ月前と変わりもなく、北西辺境州の各地ではテロや銃撃、誘拐が頻々。パキスタンへ帰って来た翌日の新聞トップ記事は、「パキスタン政府が、ムンバイ・テロ犯の一人をパキスタン人だと認めた」というもの。(パキスタン国内でのテロにも、たまにはインド国籍の人間が混じっているのだから、不思議でもないけど)

しかし、ムンバイ・テロの実行犯の殆どがヒンズー教過激主義者だったというのも多くの事実が示している。テロ直後に知り合いのアチコチから送られて来たメールを帰パ後に見たが、実行犯たちの手首に巻かれている黄色とオレンジ色のリストバンド(手首の輪)写真はヒンドゥー教徒が身につけるものだし、現地新聞などの抜粋はインド政府の言い分に真っ向から反論するものが殆どだった。

インド政府には、自国民が関与していた、あるいは自国内のイスラーム教徒の犯行とは発表したくない、苦しい事情があるのだろう。だからこそ事実が判明しない前からすぐさまパキスタン当局が関与していると言い募るのだ。
インドは従来からの国内テロでも、自国内の不満分子の活動はすべてパキスタンのせいにして来た事実がある。膨大な人口を抱えるインド、そのコントロールのために政府はなりふり構わずというところだ。インド国内のイスラーム組織が犯人と判ってしまえば、イスラーム教徒とヒンドゥー教徒の対立が目に見えて酷くなり、大虐殺に発展しかねない懸念もあるのだろう。が、とにかく自国の政策ミスを表面化させたくないというところか。多民族を抱える中国も似たようなものだ…。

元々が1つの国であっただけに、兄弟ケンカとも言えなくはない印パ問題は本当に微妙だと思う。インドと戦って勝てる見込みのないパキスタンだけに、核を持ち出さないという保証はないものな…
昨日、アメリカがパキスタンの「核開発の父」と言われたカーン博士をはじめ13の個人・企業に対し、在米資産凍結などの制裁措置を行ったと発表している。カーン博士は数年前から数ヶ国に核を売ったとして自宅軟禁に置かれているが… ムシャラフ前大統領らの「身代わり」にさせられたと主張もしている。
本当はブット元首相の許可の下、行動をしたと言いたいところかもしれない。しかし今の状態(ブット元首相の夫ザルダリが大統領では、それも言えまい。せめて権力の座から落ちたムシャラフのせいにでもするより手はないのかも)