武装勢力(タリバーン)との交渉は絶対にしないとするブッシュ政権にギラニ首相は強く反発、政策の転換をし、対話を開始したのが4月。わずか3ヶ月足らずで再びタリバーンを掃討することになって、穏健なギラニ首相はガッカリしていることと思う。
2001年からのアメリカ主導によるタリバーン掃討の政策は失敗し、国民の反発を受け、さらには莫大な軍事費を使ってパキスタンは国家として疲弊した。
新政権とタリバーンとの和平交渉は順調のように見えたのに… 新聞では一昨日から「事実上失敗」の見出しが躍っている。そして、今朝の新聞に至っては、第一面の全面トップ、「武装勢力との戦いに軍が行動」と。 TVでも和平交渉失敗を一昨日の夕方から延々と流している。
「物事は、互いに話し合えば理解が出来る」とは思ってもいないが、和平交渉の失敗は即、治安の悪化に繋がる。
一昨昨日の新聞ではスワットの奥にあるリゾート地で、政府公営のホテルが焼き討ちに遭い死傷者数名と。
政府やタリバーンの指導者たち、あるいは中心人物たちが和平について真剣に努力をしていても、必ずそれに反対する勢力もあって、どこで躓くかは分からないし、アメリカだって和平交渉の邪魔をした可能性は大きい。
約1ヶ月前に北西辺境州で一番力を持つ政党が、スワットで和平協定を結んだ。快挙だったと思うが、タリバーンの一部は納得しなかったのだろう。そしてブッシュ政権も。
ブッシュ政権は(本当かどうかは知らないが、たぶん本当だと思われるが)パキスタン政府に、「有事の際には、米軍はパキスタン政府の許可がなくとも米大統領の承認だけで(攻撃)価値の高い標的を攻撃する」と伝えているとか…。まったく、アメリカは国家の主権をなんと心得ているのか…
ギラニ首相はタリバーンに対し「武器を捨てない者とは、もはや交渉しない」と最後通告を行ったというが、ある面ではアメリカに押し切られた感じもある。穏健、常識派のギラニ首相にとっては実に残念な「最後通告」だったろうと推測する。でも諦めずに、和平交渉を再開して欲しいと祈っている。
政府軍はペシャワルの町外れに続々と集結、掃討を再開。早々と爆撃の写真などを掲載している新聞もある。爆撃の音に脅かされているのはタリバーンだけではない… 実に残念でならない。